正義ってお前さあ

職場のバイト連中の間で某マルチが流行った。というより、勧誘マンがバイトとして入ってきて、数人が釣れた。その数人に私が入っていた。最初に言っておくと、私はマルチには加入していない。勧誘マンの人柄に好感を持っていたし、彼の持っている技術を頂こうと思いセミナーに参加した上で、マルチは無理や、とハッキリ断った。

でも他の数人は乗り気だったようなので、まあ頑張れという気持ちでいた。話を聞く限り法に反しているようなことはないし、失うものといえば友人くらいのようだ。

稼げる人は稼げるだろうし、稼げない人は稼げないだろう。どこの業界でも同じ、向き不向きというものがある。

 

で。今日職場に行ったら、幹部社員に呼び出された。

テーブルを挟んだ向かい側に社員2人。

「マルチ、やってるの?」

ストレートかよ。

「やってません」

「○○(勧誘マン)と楽しく話してて熱心にノート取ってたりセミナーに参加してたって聞いたけど」

「勧誘マンとは楽しく話しましたしセミナーにも行きましたが、マルチには加入してません。するつもりもありませんし、彼にもきっぱりと入らないという意思を伝えてあります」

「信じていいんだよね?」

「はい」

一応は信じてもらえたのか、社員が話し出した。

勧誘マンが他のバイトの子にも勧誘をしていること。系列店で過去にも同じような事例があり、バイトが全滅したこと。私がもしマルチに加入していたら、クビを切るつもりだったこと。勧誘マンはもう見限っている、ということ。

ふーん、と大人しく聞いていたが、社員の言葉に引っかかった。

「結局ああいうの信じるのは頭悪い奴なんだよね。俺は正義の味方でいたいからさ、こういう間違ったことがまかり通ってたら見過ごせない」

……そうですね、正義の味方は悪役の話を聞きませんもんね。

そりゃ信じるもクソもないし、相手方を悪役に仕立て上げて頭が悪いと一蹴してしまえたら楽でしょうよ。

 

頭が良い悪いで他人を二分する人間はクソダサい。

いや、二分すること自体は別に良い。私だって明らかに話が通じない相手を見下さずに居られるかと言ったら難しい。ただそれを公言して、自分はわかってます、自分は頭いい側の人間です、と主張するのは死ぬほどダサいと思う。

他人に言ってもらえないから自分で言うしかないんでしょう?

今までバイトとしてでもかなり職場に貢献してきてくれた人を、クズ野郎と決めつけ(本当にクズ野郎と言った)、自分は正義の盾に守られてるつもりなんだろうか。

思考停止も甚だしい。

別に勧誘マンを庇うつもりではない。彼ならどこにいっても割と上手くやるだろうし、今現在金に困ってるわけではないらしいし。

ただ私は彼の話をちゃんと聞いた。聞いた上で、自分の状況や資質や知識と照らし合わせ、自分で考え得る最も合理的な判断としてその誘いを断った。自分の頭で判断を下した。

 

だからスッキリしない。

不穏分子を排除して、それが会社のためなのか。世間の評判は判断材料にはなっても、それを盲信して常識ブレードでぶった切っていくのは果たして正しいのか?

思考停止して、他人を否定して、それを正義だと宣うのか。

そりゃ戦争もなくなんねーわ。

 

この世に正義なんか存在しない。

自分が正しいという思い込みはあまりにも傲慢だ。

他人を変えることはできない。

共存するために話し合い、歩み寄り、お互いが変わっていく。それを成長と呼ぶんじゃないのか。

正義を信じることは成長を拒むこととほとんど同じ意味なんじゃないか。

 

そんなことを中学生ぶりに考えた一件だった。