ねむれぬ

久しぶりに眠れない夜だ。

眠れないに加え、夫が寝ていることが条件なので、まあ、必然的にこういう頻度になる。

 

2日後に人前に出る用事がある。

長い海外生活から地元に戻って来たため人間レベルが地に落ちていたので、人間に戻るために美容院に行った。

そこのオーナーと思しき人はなんというか自信満々な中年で、私が絵を描いて生計を立てていると言うと「最近そういう人っていっぱいいるよねw」とおっさんらしいクソリプをくれた。

その時点で、あ、これ私が客なのに接客させられるやつだ、と思ってものすごくげんなりした。事実、世間話の皮を被った自慢と謎の人生哲学を聞かされるばかりだった。

彼はインスタや雑誌で流行を追うことをしないと言う。自分の美的センスと目の前のお客さんに向き合って最適なスタイルを考えるのだという。

美術の世界で生きる者として言わせてもらおう。

インプットとアップデートを諦めた感性はその時点で死んでいると。

 

若めの女性スタッフもいたのだが、その人はシャンプーが鬼のように下手で終わっていた。

めっっっっちゃくちゃ痛い。普通のシャンプーでも抜けがちな私の髪がどれだけ抜けたのか考えたくない。すすぎすら痛い。シャンプー終わってタオルで拭くのすら痛い。自分が犬になったかと思った。

美容院に行く意味の半分はシャンプーにあるのだ。シャンプーの癒し効果を得られないというだけで大きな損失になる。

彼女はオーナーらしきオッサンのイエスマンで、私の前髪の処遇を決める時もオーナーのオススメ論を補強するばかりだった。

 

さて仕上がり。

前髪は私史上初のオン眉になり、後ろ髪は鬼のように梳かれたおかげでスカスカのザラザラになった。

元がくせっ毛なので(それはオーナーも得意げに見抜いていたはずだが)大量に梳かれてベリーショートほどの長さになった短い毛が暴れまくって上の毛を浮かすおかげで見た目のボリュームはほとんど変わっていない。むしろスカスカになったせいで清潔感がなくなったようにさえ思う。

これ、微妙に伸びて来た時が一番やばくない?次どうやって切るつもりなの?短い毛だけピックアップして長さ揃えるとか?そんな芸当ができるわけない。

というか、自宅でのセットが大変すぎる。

短い前髪をアイロンで挟むのも大変だし、方向も付けづらい。

大量に梳いたせいで短い毛のシルエットが目立って、頭がでかいのに異様に髪が少ない人になっている。今まで長い髪の重さで抑えられていたくせが爆発しているので、シルエットを落ち着かせるために短い毛を必死で挟んで伸ばす作業。前までは一切しなくても良かった作業。

結んだ髪の量が少なすぎて小さいゴムでしか結べない。結んでも短い毛が跳ねていてもっさりする。

 

いや、どうすんの?

2日後人前に出るんだって。

10500円(たけえ。リタッチとカットで東京なら初回クーポンとか使えば8000円しない)を支払いながら泣きたい気持ちになったところで女性スタッフの一言。

「このままショーに出れそうですね〜!」

え、ショーってどんな?落ち武者コンテストとか?

鏡に映ってる私とあなた方の眼に映る私はそんなにも乖離してるの?

私が自意識の沼から抜け出せていないだけですか?